組合のなりたちと発展
トセパン協同組合は、1977年に設立された協同組合です。
メキシコ・プエブラ州北東部の山岳地域に位置し、ナワット族とトトナカ族を中心とした、先住民族が多い地域です。
22の地域(市町村単位)、35,000世帯(2017年11月現在)の組合員が参加しています。
正式名称「トセパン・ティタタニスケ」は、(ナワット語)で「共に働き」「共に話し合い」「共に考える」という意味です。その名前はトセパン協同組合のなりたちを表しています。
組合設立前のこの地は、完全に「忘れられた地域」(トセパン協同組合員レオナルド・ドゥランさん談)でした。
政府の活動対象外で、国からの予算などは割り当てられず、公共サービスも届かない極貧地域。
さらに、地域の大土地所有者である2、3家族が政治・経済を牛耳っている状態でした。
一方で、生活必需品の価格は高く、生産物を買い取る仲買業者は安く買いたたき、限られた数家族だけが富を手にし、他の住民は貧困に陥るという悪循環が続いていました。

そこで、地域住民が立ち上がり、1977年に「トセパン協同組合」を設立しました。
最初に取り組んだのが生活必需品である砂糖(この地域の方は、コーヒーに砂糖をたっぷり入れます)を安く仕入れて組合員に安く売ること。その次が、地域の生産品であるコーヒーとオールスパイスを生産者から適正な価格で買い取ることでした。
砂糖の価格は3分の1になり、コーヒーとオールスパイスは今までの2倍の価格で買い取られるようになりました。
この経験から「団結して動くことで、状況をみずから変えていくことができる」ということを実感を持って知ることが出来たのが、何より大きな変化でした。
トセパン協同組合のコーヒーとフェアトレード
トセパン協同組合のコーヒーが完全に有機栽培に転換したのは2000年からです。
有機に転換するきっかけとなったのは、弊社代表・中村との出会いがきっかけでした。
今では、有機JAS認証や、ヨーロッパの有機認証、フェアトレード認証なども取得し、ヨーロッパへの輸出へと大きく発展しています。
トセパン協同組合のコーヒーは、フェアトレードによって取引されていますが、「より高く買ってもらうこと」が大事なのではなく、人とのつながりや環境とのつながり、背後にある活動を知ったうえで購入してもらいたいと、組合員たちは考えています。 生産者と消費者の人間関係を大切にすること。ビジネスの取引の関係だけではないのです。
また、トセパン協同組合の「団結」の精神は、私たち日本人にも同じように向けられています。
日本からツアーを組んで、トセパン協同組合本部だけではなく、生産者の畑にも足を運んでいるということ。 生産者にとっては、どういう人が自分の育てたコーヒーを飲んでいるか知っていること。 そういった「つながり」が、トセパン協同組合のコーヒーにはあるのです。
そんな中で、2011年に日本で東日本大震災が起こった際には、年一回の組合総会で「日本に対してどんな協力ができるか?」という議題が上がり、弊社との取引価格を優遇するという決定がされました。
3.11の支援や避難受入れに奔走していた弊社にとっては、大変ありがたい申し出となりました。
トセパン協同組合が大切にしていること
トセパン協働組合の活動が素晴らしいのは、自然環境や組合員一人一人に配慮した持続的な活動を行っているというのはもちろん、ナワット族の文化や伝統を守りながら、それを活動の中にしっかりと反映させているというところにあります。

1. 一番大事にしているのは”人”。
持続可能な家屋。栄養バランスの取れた食事を通して、人を大切にできる。
2. フェアトレード
利益の出るビジネスを作り、組合員の収入を高めていく。
3. 教育
組合員家族に適切な機会を提供し、個人の能力を高める。
4. ナワット族、トトナカ族の伝統文化を守る
トセパン協同組合は、外に向かって開いている組織です。 外からの情報が入ってきやすく、自らのアイデンティティを失う可能性があります。
5.男女同等に暮らす、生きる
先住民の村では、女性が社会に出る機会がありませんでした。
(2017年トセパンの代表に初めて女性が選出されました)
6.自然環境を守って、次の世代に残していく。
このように、地域の環境や自らの文化を守りながら、独自の活動に取り組むトセパン協同組合は、メキシコ政府から「環境賞」や「フォーレスト賞」などを受賞し、2017年にはトセパンの銀行(トセパントミン)が「ヨーロッパ マイクロファイナンス アワード2017」を受賞するなど、国内外から高い評価を得ています。
トセパン協同組合の紹介映像
トセパン協同組合の多様な活動がよくわかります。
日本語字幕付きです。どうぞご覧ください。
トセパンコーヒー物語もあわせてご覧ください。
トセパンコーヒー物語
<トセパンの概要>
第1話「ケツァールの地〜トセパンが活動する地域」
第2話「メキシコとコーヒーの意外な(?)関係」
第3話「トセパン協同組合ってどんな組織?」
<トセパンの歴史>
第4話「抑圧されてきた先住民たち」
第5章「闘いは砂糖から始まった」
第6話「トセパンを支える作物・オールスパイス」
<森林農法・アグロフォレストリ>
第7話「森を守り、森を育てるコーヒー」
第8話「「おかげさま」を大切にするフェアトレードコーヒー 」
第9話「森林農法とは?」
第10話「森林農法がもたらす豊かさ〜生物多様性」
第11話「森林農法がもたらす豊かさ〜安心できる暮らし」
<トセパンの活動と意義>
第12話「トセパンがもたらす組合員の自立と誇り」
第13話「お金はみんなのもの〜トセパントミン」
第14話「より良く生きるため、女性達よ集まれ」
第15話「ホノトラの闘い」
第16話「学び、成長していくこと」
(注)これらの原稿は、トセパンが作成した「30周年組合史(2007)」、ウインドファームとも付き合いが長いメキシコの生態学者パトリシア・モゲル氏の各種論文、ウインドファームスタッフが現地を訪問した際に作成したレポートなどを編集して作成しています